坐骨神経痛

江戸の昔より神経痛には鍼

神経痛の治療をマッサージで改善させることは、鍼灸師からすれば、倍以上の手間暇がかかる。もしくは手技では治る可能性が非常に低い、難しい。と考えます。
が、体質分類で言いますと、喜按と言うマッサージが好きな方がなりがちな疾患であり、もう一つの特徴として、鍼に怖さを覚える方も多いのでは無いでしょうか?

このページをご覧頂いているという事は、恐らく鍼灸を経験した事が無い方が多いと思いますので、まず最初に鍼灸で効果が見込める症状についてお話させて下さい。

現在効果があるとされているものとして、神経痛・リウマチ・頚肩腕症候群・頚椎捻挫後遺症・五十肩・腰痛 というものは日本でも保険適用の対象となっており、効果が認められています。
坐骨神経痛というのは上記の神経痛にあてはまるのですが、神経痛というのは日本の場合、室町時代や江戸時代といった昔からその効果が認められていて、当時の民衆にとっても身近な医療として利用されてきたのですが、それだけ長い間認められた医療というのは実は他にありません。鍼灸について様々な話を聞いている方もいらっしゃるかもしれませんが、安心して受けて頂ける医療ですので、心配はご無用です。
薬や手術などに頼る前に今お悩みの症状を我々に診させて頂ければ必ず改善させてみせます。

更にWHO(世界保健機関)やNCCIH( アメリカ国立補完統合衛生センター )でも鍼灸への理解や見識が深められています。NCCIHという機関では保管代替医療についての研究が行われている政府機関で、現代では西洋医学の治療がメインとなっていますが、それに代わる医療というものについて研究が行われています。その研究対象の中に鍼灸が含まれていて、今現在その効果をNCCIHも認めております。

どの様な治療をするのか

治療の仕方はとてもシンプルで、原因として考えられる臀部の筋肉に対する治療、その原因を生む腰部の治療、腰部に疲労が溜まる要因となる胃や腎の治療、といった具合に局所から根本部分までフォローするような治療を行います。
都合の良い様に聞こえるかもしれませんが、鍼灸はそういう事が可能な治療です。筋肉に対しては、その筋肉に刺す事によって血流を促して質の良い筋肉を作り、狙う場所を変えればトリガーポイントによって、昨今流行りの筋膜リリースと同様の効果を狙う事もできます。可動域や痛みといったものに関してはスポーツ鍼灸の分野で攻め、胃や腎といった引きつりの原因となりやすい内臓へのアプローチは東洋医学でフォローするといった事で、多角的に原因に対応できるのも強みの一つと言えるのではないのでしょうか。

薬などを使用してしまうと、胃に大きな負担が掛かる上に全身に効いてしまう為、感覚もおかしくなってしまいます。鍼灸の場合は原因部分にフォーカスして治療を行う事ができますので、体への負担というのはかなり少ないものと言えます。
神経痛というのは、筋肉による狭窄と神経自体の損傷、炎症によって起こると言われていますが、その実解っていない部分も多く、医師でも対症療法しかできず、その後に鍼灸院へ来るということがよくあります。
対症療法に使うものとしては筋弛緩剤や痛み止めといったものになってしまいますが、そのどちらも体には良い影響を与えません。これらの薬と一緒に胃を守る薬を出すのがその証拠でもあります。

鍼灸治療の良い所の1つに、深部の組織を刺激する際に、表層部の組織を破壊する事がないので、マッサージのようにやった後の揉み返しの様なものがありません。
鍼灸治療によって怠さが出る事がありますが、それは身体の修復による怠さですので、その怠さが取れる頃には逆に症状が軽減、改善されています。

鍼灸である事の利点

整形外科、整骨院、マッサージ、整体、カイロ、これらに通われている方は比較した時に鍼灸はどうなのかと思う方も恐らくいらっしゃると思いますのでお話させて頂きます。

まず言える事として、鍼灸というのはこれらの治療(?)とは根本的に考え方が違います。よく言われるのは、「本治法」と「標治法」というのがあり、「本治法」というのは症状に対して原因の治療を行い、根本からの治癒を考えます。対して「標治法」というのは症状に対して直接的な治療を行う事を指します。

また古典においても上薬・中薬・下薬というものがあり、王様に対して行う治療と言われていて、基本的には上薬から行い、それがダメなら中薬、ほとんどは中薬で終わりますが、最後の最後にやむを得ず副作用を覚悟で下薬を行うというものになります。

上薬とは…
  身体を作る基礎となりえるもの。(生活習慣等)
  長期で見ても副作用も無く、不老長寿の効果があるもの。
中薬とは…
  副作用が無く、体質を根本から改善させる治療。(鍼灸等)
  上薬では解消できない症状を改善させる為のもの。
下薬とは…
  劇薬。最後の手段。対症療法。
  副作用があり、使用をするにしても短期間での使用とするもの。

本来であれば「上→中→下」と徐々に下がって行くのですが、現代の医療というのは劇薬である下薬から治療を行う傾向があります。下薬は劇薬ですから使用すればするだけ負担がかかり、気になる部位以外にもダメージがいってしまいます。つまり最後の手段を最初に行うという愚行に走っている訳です。

上の2つの図は世の中にある治療を上中下薬で分け、それに対する利用者の割合を表したものですが、鍼灸や漢方といったものを除く世の中の医療やサービスというのはほぼ下薬と呼ばれる標治法で行われております。そしてそれらを利用する方が圧倒的に多いです。

つまりどういうことかと申しますと、痛みなどの症状を誤魔化す事は出来るが、原因が改善されていない為に再発してしまう、更に程度が悪くなってしまったりしてしまう様な治療を、大多数の方が受けているという事になります。
しかし、そんな治療に皆様の身体を任せたくは無いのです。鍼灸は標治法も本治法も出来ますが、その神髄はやはり本治法にあると思います。原因点である部分を突き止め、それを改善させるのに必要な治療を行う、それで結果的に症状が改善されて、再発もしないような身体にしていくことが我々の務めであると感じております。

ちなみに鍼灸は中薬に入っていますが、実際に鍼灸を選ぶのは上薬の考えが理解できる方たちだと思います。今は理解ができなくても、少しのキッカケでそういう感覚を得られる素質を持っている方達が鍼灸を選んでくれていると思います。

鍼灸以外の治療を受けてこられた方あるある

鍼灸の1番の利点は自然治癒力を活かして、本人の力で治っていく事にあります。だから身体にも負担が少なく、本来あるべき姿に戻す事ができます。余計な所に負担をかける事もなく、崩れたバランスを取り戻す事に注力する為、悪化する事はまずありません。

ところが他の治療を受けてこられた患者さんのお話を聞いてみると、
「マッサージをしてから痛みが酷くなった。」
「ギックリ腰のようになってしまった。」
「カイロで痺れが出るようになってしまった。」
「病院では湿布のみで何も変わらず。」

なんて事を日常茶飯事で言われたりします。

ところが、そうやって仰ってた患者さん達が鍼灸を受けて帰る頃には、
「あれ?痛みが無くなってる。」
「普通に動かせる。」
「痺れてない。」
「もっと早く来れば良かった。」

という言葉を日常茶飯事で頂きます。
正直言えば、最後の言葉通り、もっと早くに来て頂ければなぁ。というのが鍼灸師の気持ちだったりします。

坐骨神経痛の治療論

坐骨神経痛というのは主にお尻から膝にかけての痛み、痺れを指します。
歩き出しが辛かったり、日頃から突っ張るように痛かったり、比較的メジャーな神経痛の一つかと思います。
治療を始めるタイミングとしては、早ければ早いほど治し易く、痛み>痺れ>麻痺の順に治し易くなります。麻痺というのは症状が進行しきった状態ですので、痺れが出てくる前の痛みや違和感を感じている時点で治療が行えるのが一番良いのですが、実際に今まで診させて頂いた方達でそれだけ早い段階で来て頂いたのは大体2,3割ぐらいです。

早い段階で来て頂ければ1,2回の治療で改善できるのですが、恐らく軽めにしか症状が出ていなければ「その場だけしのいでしまえば…」という考えに至るのだと思います。結果的に発症後時間が経過してしまい、中には痺れを伴っている方も多く、稀に麻痺しているような方が来られる感じです。

痺れ、麻痺の段階までになると、症状の軽減自体は初回から感じられるものの、痺れが無くなる所まで治すとなると、今までの経験から考えて治療回数が最低でも5回位は必要になるかと思います。
しかし、ご自身の身体の事を理解して頂き、治療以外の日常でも少し気を遣って頂きながら治療できれば、数回で治ってしまう事もございますので、いち早く治したいという方はぜひ一緒に治していきましょう。
治療するにあたって、坐骨神経痛の事を知って頂き、上手く管理できるようになって頂ければと思います。

坐骨神経について

まず坐骨神経痛の原因とされている坐骨神経が、どこにあるのかを把握して頂けると、これから治療していく上でイメージもしやすいかと思います。

腰椎神経叢
坐骨神経

上の図が坐骨神経の走行と関連する筋肉です。
坐骨神経というのは腰椎から伸びる幾つかの神経(主に腰椎4番目~仙椎3番目)が束になってできたもので、大腿部から膝周りの筋肉を支配する神経を分枝し、膝の辺りで大きい2つの神経(総腓骨神経,脛骨神経)に分かれます。

走行から考えると、坐骨神経の流れが阻害されて伝達が悪くなれば、お尻の痛みや痺れはもちろん、膝やふくらはぎ、更にはアキレス腱など、下半身全体に症状が出ることが考えられます。
その為、膝痛やアキレス腱炎などの下肢の症状を治す時も、坐骨神経痛と同様の治療を行う事で結果が得られると言えます。

坐骨神経は末梢神経の中では一番太く長い神経だと言われていて、それだけに筋肉などの影響を受けやすく、日常生活やスポーツなどで付近の筋肉が張ったり硬くなったりすれば、比較的簡単に症状が出やすい部分だとも言えます。

原因となる部分

特に原因としてよく言われるものが、梨状筋という筋肉によって坐骨神経や血管の狭窄が起こる「梨状筋症候群」というものがあります
人によって梨状筋と坐骨神経の位置関係が違うのですが、場合によっては梨状筋の真ん中を坐骨神経が貫いていたり、逆に梨状筋を挟み込むように神経が走行していることもあり、これらの場合はより梨状筋の影響が出易く、梨状筋が硬くなったりすればすぐに狭窄や血流障害が起こります。また、座っている時間が長かったりすると、梨状筋含め、腰から臀部にかけて血流が落ち、より固まりやすくなります。人によってはクッションなどを用意して凌いでいる方もいらっしゃると思いますが、それにも限度があるとは思います。

梨状筋というのは原因となり易い部分ではありますが、病院やマッサージではかなり治しづらい症状の一つだと思います。というか治せないと思います。
梨状筋というのは臀部(お尻)の筋肉で、脚を外に旋回させる筋肉なのですが、大きい筋肉の下にあり、いわゆるインナーマッスルと呼ばれるもので、深部の筋肉の為触診することも難しく、この筋肉のみを刺激するといったことが基本的にできません。
マッサージなどで緩めたりしようとしても、その上にある筋肉などを潰して傷つけてしまい、変わらないならまだしも、可動域が悪くなり、腰痛などに発展する事がありますので難しい所になります。深部にある為、マッサージはもちろん、電気治療や温熱治療なども効果を上げづらい部位ですので、悩んでいる人も多いのだと思います。

そこで効果を出し易いものが鍼灸という訳です。
鍼灸院だから鍼灸を勧めるのは当たり前と言われたら元も子もないですが、鍼灸の特性を考えればこれほど効果が期待できるものは他にないと思います。
鍼灸の特性というのは、まず鍼(ハリ)の細さと長さです。
一般的に使われるものの太さは髪の毛より少し太いぐらいで、痛みはほとんどなく、筋肉を傷つけることもありません。

しかしそんなもので逆に善くなるのかと思われるかもしれませんが、鍼というのは刺した部位の血流がよくなるという効果があります。
刺した部位が発赤するのがその証です。これはフレアー現象と呼ばれ、軸索反射という反応によって引き起こされる現象になります。

機序などを説明すると長くなりますので簡潔に述べさせて頂くと、鍼という異物で侵害刺激を受けたと感じた神経が周りの神経へも情報を伝達し、組織の修復をする為に血管を拡張させるという反応を起こします。血管が拡張すれば一時的に血流も改善される為、血流障害で痛みが出ている場合にも効果があり、血流が増えれば組織の修復も盛んに行れるので炎症などにも効果があります。

また、硬くなってしまった筋肉というのは血流が落ちていて、栄養が行き届いていない為に筋肉自体が痩せたりします。痩せた筋肉というのはパサパサしていて柔軟性がないので、運動の障害になりやすく、それで更に神経や血管などの流れを阻害しやすくなります。
そんな筋肉に対して鍼を刺すことで先ほどの反応で血流を促し、硬くなって痩せてしまった筋肉を元の柔軟性のある状態に戻します

梨状筋に対しても同じで、硬くなってしまった梨状筋にアプローチをかけることで元の状態に近づける、回復させる事を可能にします。
本来深部にある梨状筋ですので、ストレッチも難しいですし、先程もお伝えした通り、マッサージではまず難しいと思います、鍼灸だからこそピンポイントに治療できるものです。

ここまで坐骨神経が狭窄されてる場合の説明をしましたが、坐骨神経痛というのは坐骨神経によって引き起こされる症状で、坐骨神経の根本は脊椎、もう少し細かく言えば腰椎、仙椎が発端の為、この部分に何らかの損傷や変形がある場合、坐骨神経痛と同じ様な症状が出ることがあります。

そういったこともありますので、お尻が痛いから坐骨神経を挟んでるという考えは少し危ういとも言えます。先にも説明した通り、梨状筋なんかは深部にある為に正確な触診が困難です。解るとしても硬くなっているかどうかぐらいで、実際にそれ自体が悪さをしているかどうかというのは可能性云々の話になってしまいます。
だから実を云うと梨状筋が原因であるということを特定するのは難しいです。

梨状筋以外の原因

一般的には梨状筋症候群が原因となる事が多いとされていますが、当院での経験上、坐骨神経痛には胃腸症状なども絡んでくることがある為、お尻だけ治療していてもなかなか改善されないということもあります。
これは胃腸がおかしいから腰が悪くなって坐骨神経痛が出るとか、その逆で坐骨神経痛があるから胃腸が弱るとか、どっちがどうこうというものではなく、どちらも診る必要があるものだと考えています。

何故胃腸症状が絡んでくるのかですが、まず胃に伸びる神経が腰の少し上辺りから伸びていることが考えられます。背中から腰が張ってしまうことで神経の伝達を阻害し、胃の働きを悪くすることが考えられます。
腸の場合も同じ様に、腰から神経が伸びている為、腰が悪くなることで便秘や下痢などお腹の調子が悪くなりやすくなります。

この場合逆も然りで、胃や腸に負担を掛けるような食生活などをしていますと、胃腸の調子が落ちることで、それらを支配する神経を伝って、腰へ緊張が伝わり、腰から坐骨神経といった流れもできます。

この様なことから、あくまで梨状筋は一つの原因であると考え、腰も一緒にケアし、更には腰や背中が固くなる原因になる内臓のケアも必要になってきます。
つまり坐骨神経痛だから坐骨神経だけを診るのではなく、全身のケアを考えて頂くことをオススメします。

また、よく勘違いされやすいのですが、痛みがあるからといって動かさないというのは逆効果で、多少の痛みであれば少し動かした方が改善に繋がります。当院でもお伝えしますが、歩く事というのは非常に重要で、筋肉を上手く使ってあげればそれだけで筋肉への血流量を上げ、硬さが取れていくものです。
腰椎が原因となる場合でも、骨の並びや周りの筋肉などに影響を与えますし、結果的に全身を動かす事になるので、腰回りのみならず頚などにも併せて効果が期待できるかと思います。

おまけとして、アキレス腱炎や足底筋膜炎、膝痛というのも坐骨神経痛と関係がないとは言えません。前半の部分で説明した通りに、アキレス腱や足底筋膜、膝周りを支配する神経というのは、坐骨神経の分枝であることがほとんどです。

筋肉というのは血流量が多いか少ないかによって、柔軟性、耐久性、修復力が大きく変わります。血流というのは血管の太さだけではなく、神経の伝達具合によっても、
影響を受けるとされています。

つまりアキレス腱炎や足底筋膜炎などの場合も、原因をそこに留めず、お尻や腰、胃腸なども一緒に診ることが重要だと言えます。
現在これらの症状で治療を行っているが、なかなか治らないという方は、一度自分の身体の状態を見直してみて、その上で治療を行ったり、ここも調子がおかしいというのを伝えることで、結果を変えられるかもしれません。

一つの考え方として頭の隅にでも置いといて頂けたら幸いです。
ご自身の状態に合わせて腰痛症胃腸症状婦人科疾患などもお読み頂けるとより理解が深まるかと思います。

 坐骨神経痛について(まとめ)

坐骨神経痛といっても原因は様々で、それらを諸々考えた上でのアプローチがおススメです。膝痛やアキレス腱炎なども坐骨神経痛と同じような原因で起こり易くなるものですので、症状名にこだわる事無く大局を見た治療を行えるとより良い結果を得られる事と思います。

投稿日:2019年4月4日 更新日:

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